映画「国宝」とても感動しました。今年一番といってもいいくらい良かったです。

映画

こんなに美しい映画、思い出すだけでまた泣けてきます。年のせいか涙腺が弱くなり、途中何度も泣いてしまいました。

俳優たちの演技が全員すばらしいのはもちろんですが、映像も音楽も本当にすべてが美しいです。

吉沢亮さんが演じる喜久雄が歌舞伎の名門に引き取られ、芸の才能を開花させて人間国宝になるまでの半生を描いています。

吉沢亮さん横浜流星さん渡辺謙さんら俳優が実際に演目を演じていて、息や衣ずれの音がすぐそばで聞こえ、骨身を削っているのが分かり気迫を感じます。

喜久雄は長崎の任侠の家に生まれますが親を失い、上方歌舞伎の名門花井半二郎の部屋子となります。そこには同い年の実の息子・俊介がいました。二人はよきライバルとしてお互いを高めあっていきます。

才能に恵まれたのは喜久雄ですが、将来を約束されているのは御曹司である俊介です。何事も心に秘める喜久雄に対して、華やかな存在感がある俊介。正反対な二人です。

喜久雄と俊介はコンビの女形で売り出され、「二人道成寺」や「二人藤娘」で人気スターとなります。やがて幾つもの出会いと別れがあり、何度も困難が訪れます。

当主が亡くなり後ろ盾を失って彷徨う喜久雄を助けるのが、歌舞伎の興行を担う三友の社員竹野(三浦貴大さん)です。

私はこの時竹野が天使に見えました。
最初は社長に嫌々連れられて来て、歌舞伎は時代遅れみたいな態度だったのに、「万菊さんが会いたがっている」と言って迎えに来てくれるなんて感涙です。

万菊を演じているのが、田中泯さんです。この方は少しの出番でもいつも強烈な印象を残します。無言でも圧倒的存在感です。

様々なことは、良い行いをして真面目に鍛錬すれば成功するというものではなく、運命がそうさせるのだと思います。

喜久雄と俊介は「曽根崎心中」を演じることになりますが、俊介が病に倒れます。それでも必死の形相で舞台に立とうとします。

芸能の世界では、一度その魅了に取り憑かれると、止めることが出来なくなるのでしょうか。

やがて年月が経ち、喜久雄は「鷺娘」を踊っています。坂東玉三郎さんの「鷺娘」をEテレとシネマ歌舞伎で観たことがありますが、もう本当に素敵でした。

紙の雪がはらはらと舞い散る幻想的な場面で、喜久雄は宙を見つめています。若い時に「劇場の天井から何かに見られている」と言っていたのですが、もしかしたら舞台の神様と見つめ合っているのかもしれません。

美術監督は「キル・ビル」で有名な種田陽平さんです。キル・ビルでも日本料理屋で大立ち回りがあり、女親分が倒れるのが雪の日本庭園です。
この映画でも、冒頭は雪が降る長崎の料亭でした。雪が喜久雄の顔を余計に美しくします。

それから歌舞伎のシーンでも衣装や小道具、舞台装置に至るまで、美しさを感じ、さすが種田さんだと思いました。

また歌舞伎は正面からしか見たことがないので、早替えの仕組みや舞台裏を知ることが出来たのは、この映画のおかげだと思います。

音楽がまた素晴らしく、緊張感が高まったところで静かに流れる音楽が、私の両肩をつかみ前後に揺さぶってくるようです。
終わりに映画の主題歌、井口理さんが歌う「Luminance」が流れますが、ハイトーンのため息にエコーをかけたような声で、感動をいつまでも引き延ばして現実世界に戻れなくしてくれました。

ぜひ原作も読んでみたいと思いました。

最後まで読んでくださりありがとうございます。
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