年令や立場か異なる男女が8人が登場し、出版界の裏側、性被害、性加害、正義感、夫婦関係、親子関係などを語っていきます。
文芸誌編集長木戸悠介が、10年前に交際していた女性から性被害を受けたとTwitterで告発されます。
若い時小説家を夢見てた橋山美津は編集者になりたくて、大学の恩師に相談すると出版社で働く木戸を紹介されます。会ったその日のうちに体の関係を結び、美津は洗練された大人の男性に夢中になります。
就活に失敗し普通の企業で働く美津は、木戸の力を借りて新人賞に応募し、最終選考に選ばれますが落選。次第に中年男の特徴に気がつきだして、関係も悪くなり二人は別れます。
だいたいの中年は汗かきで加齢臭がして腹に余計な脂肪がつき頭髪が薄くなるものです。
何事にも自信が持てないのに、根拠のない謎の自信だけはあります。すべて他人のせいにして生きてきました。木戸との関係も楽しい思い出もあったはずなのに、それを忘れて後から一方的に性的搾取にあったと、性的嗜好まで暴露するのはいかがなものでしょう。もしも別れた後の人生が満足したものだったら、この告発は無かったように思えて仕方ありません。
彼女なりの正義があったと思いますが、炎上してすぐに忘れられて、SNSで消費されて終わります。
木戸は結構な精神的ダメージをくらい、しばらく仕事を休職することになり、もう生きている価値は無いと自殺を図ってしまいます。
告発に少し手助けしていたのが、成功している43才の小説家長岡友梨奈です。手助けというのは後から木戸が知ったことですが、彼女が美津の文章を手直ししてより文学的にしたことを、以前担当していた編集者の立場から見抜きます。
あらゆる被害女性を助けたいという彼女の正義感は強すぎて、はたからみていて痛々しいです。そうなった理由はありますが、精神のバランスを崩しかねないくらいの激しい怒りを持ち、なんとか生きています。「悪のような正義感を持つ私は肉体的な力も持ちたい」とムエタイを習いに行き、さらに怒りをコントロール出来なくなっていきます。
長岡友梨奈の気持ちがよく分かります。私も怒りがわいて仕方がないときがあります。
そんな友梨奈にも性加害疑惑がもたれます。15才年下の彼氏横山一哉の存在です。お互い良い関係ですが、年令や立場が違うので、その様子も一哉から語られます。
もう一人編集者が登場します。友梨奈の担当者五松武夫は女を物扱いするようなクズ男で、散々ひどいことをしてきましたが、セフレに罠にはめられ、ついにはゾンビのように成りはてます。
他にも引きこもりの娘の安住伽耶、別居中の夫の安住克巳、木戸の息子越山恵斗、恵斗の恋人リコらがそれぞれの目線で語ります。
ストーリーは全く予想しないことが起き、予想できない展開になり、なんだか辛いけど感動するような不思議な涙が出てきました。最近週末ごとに泣いています。私は情緒不安定なのかもしれません。
最後に高校生のリコが登場し、女子高生のなんだかわからない最強感に希望を感じます。
過去に遡って性被害を訴えてもよい時代になりました。手軽にSNSで個人を攻撃できるようになり、性被害でなくても知らないうちに人を傷つけて、後々告発される可能性はあるかもしれません。
お互いの認識がこうも違うとは、わかりあうとかって幻想で、わかりあえないのが本当なんじゃないかと思います。
著者:金原ひとみ
発行:株式会社文藝春秋

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