イギリス映画「異人たち」を観ました。
子どもの時の心の傷を抱えたまま大人になった男が癒やされて再生するストーリーと想像していました。
不穏な音楽が不安定感を意識させます。時間はいつも朝方か夕方か夜で昼間がありません。謎だらけなのです。
高いビルディングのマンションで住人は2人だけ。部屋はたくさんあるのに、なぜか2人しか住んでいません。
同世代は郊外に家を買って出て行ったと言ってたけど、出ていきすぎでしょう。中国のマンションみたいに入居者がいないのかな。
舞台はロンドンで、窓からビルディングの夜景が見えますが、
マンションが暗くて、エレベーターから降りて部屋に行くまでの廊下も暗くて不気味なのです。
主人公は40代の映画やドラマの脚本家アダムです。俳優はアンドリュー・スコットさん。
アダムが部屋にいるとき非常ベルが鳴ります。確認のため外に出てマンションを見上げると、6階の窓から人影が見えます。この時2人は目が合ったと思います。
何事も無いことを確認したあと部屋に戻ると、6階に住んでいる男ハリーが日本製のウイスキーを持って訪ねてきます。
「一緒に呑もう」と誘いますが、アダムは突然の誘いに戸惑い断ってしまいます。でも、その時から不思議な事が起こり始めます。
原作は山田太一さんの「異人たちとの夏」という小説です。
1988年大林宣彦監督によって映画化され、同じマンションに住む住民は名取裕子さんが演じました。
テテレビで2回観たことがあります。前半ノスタルジックなのですが後半はホラーになります。
名取さんの役を男性のポール・メスカルさんが演じています。
アダムはふと昔を懐かしみ、電車に乗って郊外に出かけます。
実家には両親が昔と変わらぬ姿で住んでおり、3人は久々の再会を喜び合います。
アダムはハリーはと二度目に会った時、自然に結ばれ、関係が進むにつれて、実家にも頻繁に帰るようになります。
アダムが12才の時に両親は交通事故で亡くなっているのですが、その後どうやって生きていったのか、自分がゲイであること、学校でいじめられていたことを告白。
両親に打ち明けることが出来て、アダムは次第に心が癒やされていくのを感じます。
家族でクリスマスの飾り付けをしたり、川の字でベッドで寝てみたり、アダムは子ども時代を大人の姿で追体験します。
観客はやがて現実と虚構の境目が分からなくなります。両親と過ごす時間とハリーと過ごす時間の場面が頻繁に変わり、メタバースのようです。
アダムはハリーを誘い実家に行き、夜、暗くなったころに到着します。
その家には誰も住んでいないかのように真っ暗で、ドアを叩いても窓を叩いて両親を呼んでも誰も出てきません。
ハリーは帰ろうと言いますが、アダムは思わす窓ガラスを割ってしまいます。
次に気がつくと翌朝で、子ども時代のパジャマで実家で寝ていました。リビングには両親がいます。
3人は思い出作りのようにショッピングモールへ行き、レストランで「ファミリースペシャル」を注文し、両親が死んだ時の話しをします。
母親は交通事故で亡くなった時、片目が潰れていました。12才のアダムがそれを知って、交通事故現場に母親の片目を探しに行った話しをします。
誰かに先に拾われてしまうのがイヤだったと言うのです。
その心境がなんだか分かる気がして少しだけ泣いてしまいました。
ドリンクが3つ運ばれてきましたが、両親はいません。アダムが1人で話しています。
夜、アダムはマンションに帰ってきます。そしてハリーの部屋に向かいます。初めてハリーの部屋に行きますが、廊下が相変わらず暗いです。
ドアを開けるとムッと腐臭がします。テレビは砂嵐状態です。ベッドルームに入って言葉を失います。ハリーは初対面の夜に死んでいたのです。
どうして死んだのかは分かりませんが、とっくに死んでいたのです。
その時部屋にハリーが入ってきます。アダムはハリーとベッドの上で抱き合います。
やがてベッドはだんだん小さくなり、まるで大海に浮かぶ小舟のようです。
そして一瞬光って星になるのです。星空のたくさん煌めく星の1つになります。
これはどう解釈すべきでしょうか。アダムは翌朝普通に目が覚めて、普通に仕事するのでしょうか。
ハリーはアダムを連れて黄泉の国に旅立ったのでしょうか。
日本映画「異人たちの夏」では、主人公がふたつの出会いでみるみる身体が衰弱していきますが、やっとの思いで引き返すことに成功します。
身体が衰弱していた様子は無いけど、鼻から吸い込むドラッグの量が多いのが気になりました。適量は知らないですけど。
クスリ中毒になって健康を害しないか心配です。生きているのかも心配です。突然の結末に戸惑っています。
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