主人公の久保田慶彦さんに同情します。
7年前に離婚した元家族の娘との、毎月1回30分のビデオ通話の会話が続きません。
娘の澄香は養育費と大学の学費を出してもらっているので、特に話すことはないけど仕方なく会話しています。
47才の父親慶彦は1人ぼっちの部屋で孤独を感じていて、他者とのつながりをこれ以上減らしたくないという思いだけです。
一生懸命働いて家族に金銭的な苦労をかけないことを家族を守ることがと考えていた、世間一般的な男です。
レコード会社に就職したけど、今は音楽に直接関わることはない部署に異動になり、只今黄昏れています。
一度はあきらめた脚本家の道をふたたび挑戦してみようかと考えています。
理由は、寂しかったから。
何か始めないと誰とも繋がっていない今の人生があまりに寂しかったから。
テレビで「押し活」について誰かが解説をしています。
推し活とは、自分が特に好きな「推し」(アイドル・俳優・アニメなど)を応援するために、時間やお金を使う活動全般を指し、経済効果は数兆円規模とも言われるほど、大きな消費・文化現象になっているそうです。
メリット=心の健康や日々の生きがいを保つ。
テレビを見ていたオタクのひとりが言います。
デメリット=「オタクに金を積ませるシステム」であり、オタクは搾取される。
かつて慶彦がシナリオスクールに通っていたことを知っている、今はアイドルのプロデューサーをしている同期入社の橋本が、次にデビューするオーディション番組発のボーイズグループのストーリーを考えてほしいと協力を依頼します。
ストーリーとは、彼らの正確な物語ではなく、人が最も没入しやすい形に整えて差し出すこと。
カタカナの肩書きを持つ人々が集まり、会議というていでアイドルグループの売り方を説明してくれます。
「信徒獲得と教義の布教のために~。」 これは宗教でしょうか?
「物語に没入し、共感能力を高め、自他境界を曖昧にし没入と視野狭搾に陥らせる」と、なんだか難しそうなことを言っています。どういう意味が分かりやすく説明して下さい。
オーディション番組出身のグループはどうしても、デビュー時の人気がピークになりがちだと、色々教えてくれます。なるほど、なるほど。
熱量の低い100万人よりも、自ら布教活動に勤しんでくれる1万人を相手にしたほうが勢力拡大につながる。なるほど、なるほど。
誰かに必要とされたかった慶彦は前のめりになっていき、うっかり視野狭搾に陥ってしまいます。
著者の朝井リョウさんもひどい人です。慶彦が可哀想。
平行して描かれる、自殺した若い俳優のストーリーも辛いです。信じられないファンが、物語を勝手に作り出し陰謀論に絡め取られていきます。
読んでて切ない気持ちになります。
この本は本当にしんどい思いにさせられます。
最後まで読んでくださりありがとうございます。
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