不思議なタイトルと表紙に興味を持ち読んでみました。「ゾンビ回収婦」。著者は小砂川チトさんです。
本の帯に「圧倒的虚構世界」と書いてありますが、フリガナが「リアルライフ」とあり、全編虚構世界にほんの少し現実世界のにおわせがある程度です。
「働け」だの「役割分担」だの「称賛されたい」だの「肯定」だの、読み進めるのがしんどいです。
夫婦揃ってAIに仕事を奪われ解雇になった、30代の女性が主人公です。
ある朝、「しばらくのあいだ演奏旅行にでてきまーす!」と夫らしき人物(筆跡が違うらしい)が書いた手紙があり、一人取り残されます。
自室でよくゲームをしていた夫のVRヘッドセットを装着したとたん、異世界に迷い込んでしまいます。
雪山に建つ巨大なロッジ風の建造物で「ザ・グランド・口唇期(こうしんき)ホテル」という品のいいホテルにたどり着き、幾つかのことが起こって、NPC(ノン・プレイヤー・キャラクター)になってしまいます。

敵がグレネードランチャーで攻撃してきて、ゾンビたちは木っ端微塵に殺され、眼球やら鼻やら耳などを壁や天井までぐちゃぐちゃに飛び散らされ、床にも血しぶきが広がります。
急げ、急げ、結果出せ。
急げ、急げ、ミスすんな。改善しろ向上しろ発展し進歩しろ。
死んでもミスんな、進化しろ。
こう言いながら、来る日も来る日も、何年も前からゾンビたちの身体を回収する、掃除婦あるいはゾンビ回収婦の仕事をしています。
一生懸命働くのですが、誰も褒めてくれないことに気付きます。
まだダメなのだ これだけ身を粉にして働いていてもまだ 誰も褒めてくれない
現実世界は頑張っても報われないことばかりですが、虚構世界に行っても同じなのか!?です。
働かざるもの 食うべからず。
ちゃんとしなさい 恥ずかしい 他人様に迷惑をかけない!
お前は人より何倍も努力して、ようやく人並みなのだから。
あなたの事情など知りません。お客様にはなんら関係ありません。
勘違いするな 調子に乗るな みっともない。
急げ 急げ 結果出せ 急げ 急げ ミスするんな。
これら呪いの言葉が続きます。
私もとろい性格で、いつも早くしろと言われていましたから、言われる側の気持ちが本当に分かります。
この30代の主人公、私からみたらまだまだ十分若いです。一度の失業で現実世界をあきらめるなんて、もったいないです。
私なんて何度も派遣の仕事、クビ切られましたから。本当ですよ。
AIが発達して、これからの人生不安に感じるけど、努力しても報われないかもしれないけど、絶望しないで下さい。
終盤救いの手が差し伸べられますが、その手も危うい感じです。
主人公はどうかしっかり療養して、再出発が出来ますように。

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