映画『ブルーボーイ事件』なるほど長年の疑問が解けました。どうしてカルーセル麻紀さんがモロッコまで行って性別適合手術を受けたのか。日本で違法か合法かを争った裁判がありました。

映画

実際に起きた事件を元にしています。

カルーセル麻紀さんがなぜ「性別適合手術」をモロッコという外国で受けたのか、ずっと不思議でした。

日本でも出来る手術じゃないのかなと思っていたのです。

出来ることは出来ますが、法律違反だったとは知りませんでした。

1960年代後半、東京オリンピック開催や大阪万博が決まり、日本経済は急成長します。

日本は国際化を目指していますが、警察は街に立つ売春婦の取締りに頭を悩ませていました。

戸籍が男性なのに女性として売春する者たちは、「ブルーボーイ」と呼ばれ、当時の売春防止法では摘発対象になりませんでした。

なので、性別適合手術(当時の言葉では性転換手術)を行った医師を検挙したのです。1965年のことです。

1969年に麻薬取締法違反と優生保護法違反で有罪判決を受けました。

生殖を不能にする手術は「優生保護法」(今の言葉は母体保護法)に反するというのが理由です。

優生保護法とは、「優生思想・優生政策上の見地から不良な子孫の出生を防止すること」という、ずいぶんと上から目線の法律です。なんだか無理やりな気がします。本来は「売春防止法」違反だと思うのですが。ついでに売る方だけじゃなくて、買う方も処罰の対象にすればいいのに。

医師の弁護を引き受けた弁護士(錦戸亮さん)は、患者だったブルーボーイたちに、証人として出廷してほしいと依頼します。

主人公のサチ(中川未悠さん)は女性として喫茶店で働き、恋人がいたため、自分たちの日常生活が壊れるのを恐れ、証言することを断ります。

裁判で証言すると決めていたアー子(イズミ・セクシーさん)に対し、ブルーボーイたちの元締めメイ(中村中さん)は冷ややかです。たくさん辛いことがあり、メイは誰も信じていないのだと思います。でも裁判は毎回傍聴し、実は友達想いなのは後から分かります。

アー子は証言台に立ちますが、検事がいやな質問を投げかけてきます。とても侮辱的な言い方です。

検事は自分の正義を信じていて、子孫を残すのが人間の務めだと言います。男が女に性転換するという、こんなこと認めたら死んでいった戦友に申し訳がたたないと、戦争経験者の検事は考えています。

弁護士はブルーボーイたちを「精神疾患であり、手術は治療の一環」と、これも的外れなことを言います。

アー子は「女として生きたいだけ」と猛反発します。傍聴していたメイは「だから言ったじゃないか」という顔をし、サチもショックを受けます。

激しく落ち込んだアー子は酒場でやけ酒をあおり、言い争いになった男に暴行され死んでしまいます。

アー子は自分のお店をオープンする準備を進めていました。お店にはステージがあり、そこで越路吹雪を歌う予定でした。洋裁が得意なサチは彼女のために青いドレスを縫ってあげ大喜びされます。
仲間同士で「サン・トワ・マミー」を歌うシーンは、これから悲しみが訪れることをまだ知らない、幸せなひとときでした。

仲間が悲しみに沈む中、サチは証言台に立つ決意をします。

もう気持ちは揺らぎません。法廷でのサチのシーンは、「わたしはわたしです」と力強く証言します。

自分の生い立ちを語り、「これがわたしです」と言い切ります。

メインキャストはオーディションで選ばれたトランスジェンダー女性たちで、だからリアリティを感じます。

そして、被告弁護士は精神疾患を撤回し、「憲法13条」の「幸福追求権」を主張していきます。

むかし、中村中さんの「友達の詩」のCDを、何度も繰り返し聞いた思い出があります。

「男は男らしく、女は女らしく」という時代で、性的マイノリティは今よりずいぶんと生きづらかったろうなと思います。

近くの席の方が上映中ずっと嗚咽していました。

やがて裁判長は判決の主文と理由を朗読し・・・

満足できるラストシーンで、観て良かったと思いました。

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