1918年。帝国主義の真っ最中に生きる白人がアジアを廻る。どんな映画だろうと興味を持ち有楽町まで観にいきました。
主人公は大英帝国の公務員エドワードです。だけど英語じゃない。どこの言葉かなと思っていましたが、後からポルトガル語だと分かりました。
ビルマのラングーン現在のミャンマーのヤンゴンで、7年ぶりに会う婚約者モリーを待っています。
7年ぶりなのでもう顔も忘れたとか言っています。まだ結婚したくないようで、モリーが到着する前に衝動的にシンガポール行きの船に乗り込んでしまいます。
勤務先には何も連絡しなくていいのかなと思いつつ、彼はシンガポールからタイのバンコク、ベトナムのサイゴン今のホーチミン、フィリピンのマニラ、日本の大阪、中国の上海、重慶と、婚約者から逃げるための旅をします。
映像がつぎはぎのパッチワークのようで、モノクロになったりカラーになったりします。海外ロケはカラーで、国内のセットで撮影したのはモノクロにしたらしいです。
アジアの賑やかな人形劇がカラーでストーリーに関係なく、時々挿入されます。
タイ人のガイドは3人の美しい妻を持つ男性です。そのうちの一人がエドワードのお世話をしてくれます。「なぜ3人も妻を持つのか」とたずねますが、ガイドは何も答えてくれません。
ベトナムでは通勤ラッシュ時にたくさんのバイクが走り、なぜかワルツの音楽が流れます。
そういえば途切れないバイクの大群が、クルクル回りつづけるワルツのステップの様にも思えなくありません。
フィリピンででは初老の男性がカラオケで「マイウェイ」を涙をこぼしながら歌っています。上手くもなく下手でもない調度良さで、なせか私の気持ちもほっこりします。
大阪では道頓堀のネオンと何故か虚無僧の列が出てきます。
中国の森の中では2頭のパンダが高い木に登りずっと丸くなっています。遠くから撮影しているようです。風に揺られています。
首に木の板をはめられ、何か昔の映画が写真で見たことがある、処刑を待つ犯罪者がいます。真剣に麻雀する人々の場面では誰も笑っていないのに、爆笑したという字幕が入ります。
いくつも関係の無いエピソードが入るのですが、どれも幻想的で美しく、白人男性がひとり旅をして、オリエンタリズムに浸っている感がよく分かります。
アジアの言語の字幕が無く何を言っているのか分からないというのも、より一層旅の孤独感を表していると思いました。
エドワードは中国の竹林で枯れ草の上に仰向けに寝てみます。サワサワと葉のこすれ合う音がして良い風が吹いているようです。枯れ草も柔らかそうで、寝落ちしたのでしょうか。そのまま動きません。
次は婚約者のモリーが主人公になります。
エドワードは行き先々でモリーから「そちらに着く。Mより」という電報を受け取るのですが、あらかじめ行きそうな場所全てに電報を打っていたことが分かります。恐るべし執念です。
モリーは可笑しくて吹き出すときに、唇を震わせて「ブー!」と言うのですが、何かとコレを繰り返します。「ブー!」もいちいち長くて、「ブー-ー!」といった感じで、いいかげん止めてくれと思いました。
結局モリーはエドワードと会えないまま、中国のどこかの竹林、エドワードが寝そべったように自分も体を横たえ、動かなくなってしまいました。
この二人は生きているのか死んでいるのか分からないけど、どちらでもいいような気がします。
監督は鬼才と称されるミゲル・ゴメス監督です。
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