もうすぐ30才になるシステムエンジニアの貴樹(松村北斗さん)は、イヤホンしながら仕事していて他人を拒絶しているようです。いい大人なのに、そういう態度はいかがなものでしょう。
だいたい前髪が長すぎます。大人はおでこを出したほうがいいですよ。
やっぱり仕事が上手くいかなくなって転職することになります。こんな男にイライラします。
でもこの転職はラッキーでした。いい上司、いい仕事に恵まれました。めったにないことです。
小学校、中学校、高校生活、大人時代の貴樹を3人の俳優が演じています。違う人なのに全く同じ人物に見えます。
現実が進行する中で、過去が何度もよみがえります。
転勤族の親を持つ小学生時代の貴樹は孤独を感じていましたが、同じように転校生の明里と共通の趣味「宇宙」で仲良くなり心を通わせます。
でも小学校卒業のあと、明里は親の転勤で転校することになり、二人は文通を始めます。
高校時代に好意を寄せてくれた人、社会人になってから出会った女性。
とてもいい人なのに、貴樹は好意を受け取ることが出来ません。
貴樹は初恋をずるずると引きずっています。
中学1年の冬の夜、二人は栃木県の岩舟で再会を約束します。貴樹が東京から向かうのですが、当日は珍しく大雪が降り、電車が遅れに遅れて、約束の時間に間に合いませんでした。
真夜中になって、ようやく岩舟駅に着くのですが、誰もいない駅の待合室の片隅に一人ぼっちで明里は待っていてくれました。
これは奇跡といっていいと思います。
こんな遅い時間に中学生。これは間違いなく補導されているでしょう。
駅員さんに事情を聞かれ、警察が来て、親に連絡されたでしょう。
雪の中に立つ1本の桜の木の下で、「2009年3月26日、またここで会おう」と約束します。
こんな奇跡的な出来事を経験してしまったら、ずっとこれに縛られてしまうのは理解できます。
でも。。。
大人になった貴樹と明里と東京で時折すれ違っているのに、出会うことがありません。
本屋で、踏切で、プラネタリウムで。
貴樹は2009年3月26日、岩舟の桜の下で明里を待ちますが、明里は来ませんでした。
美しい思い出はそっとしまって、そのまま鍵をかけて保管です。
景色が美しい映画でした。積もった雪の上をガシガシ歩き、夜空に浮かびあがる桜の大木。
鹿児島の夏と海。夕暮れに延々と煙の尾を付けた種子島から発射されたロケット。
切ないですが、これが現実。
私も子ども時代を過ごした街に25年ぶりに戻ってきましたが、知っている人には一度だって遭遇したことありませんから。
住んでいた団地や小学校にも行ってみました。ほんの少しの面影を感じてセンチメンタルになるだけです。
でも、30才になるまでずっと初恋の人を思い続けていたなんて、それはそれで幸せな人生だと思います。明里は今、別の男性と幸せになっているけど、貴樹のことは一生忘れないでしょう。
監督は奥山由之さんです。
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