ホラーのようなミステリーのような、胸が痛くなる映画を観ました。
1982年のイギリスで、夫に先立たれ、長女の景子も自死で亡くし、一人暮らしをする日本人女性悦子(吉田羊さん)の元に、大学を中退した次女のニキ(カミラ・アイコ)が帰ってきます。
悦子は昼間うたた寝をしては嫌な夢をみたりして、最初から不穏な空気が漂っています。
作家を目指すニキは、戦後の長崎から渡英してきた母親の半生を取材したいと言いますが、悦子はなかなか応じてくれません。
ニキに説得されてようやく語り始めます。
1952年の長崎で、団地の上階に会社員の夫と住む妊娠中の悦子(広瀬すずさん)は、窓から見える川辺のバラックに住む佐知子(二階堂ふみさん)を見かけます。
その家に訪れた米兵に抱きつき、家の中に迎えいれます。近所の女たちは彼女を「アメリカさん」と呼び、軽蔑のまなざしでみていました。
悦子は佐知子と知り合いになります。
佐知子には幼い娘の万里子がいました。二人は近々米兵のフランクと一緒にアメリカに移住する予定です。佐知子は「アメリカに行けば女性でも何にでもなることが出来る」と語ります。その顔は凜々しくて、悦子は眩しく見つめるだけです。
佐知子は被ばくしてお金も無く、粗末な家に住んでいますが、「クリスマス・キャロル」は原語で読んだというくらい英語は堪能で、家にあるティーセットも高価な物のようです。自分の意志をはっきり持ち、物怖じしない性格はかつてブルジョアな生活を送っていたせいかもと思わせます。悦子も佐知子同様被ばくしていますが、当時は差別の対象になったようで秘密にしているようです。
そんな強さを持つ佐知子に対して、悦子はどうもフワフワとつかみ所がないような、誰にでも優しいけど、本当の気持ちはどこにあるのだろうという気がします。
広瀬すずさんの今までにないイメージで、こんな演技もするのだと知りました。
アメリカに行く日が近づくと、万里子は「川向こうに住む女の人に連れて行かれる」と言うようになります。川向こうには誰も住んでいないのに。
万里子は悦子に、アメリカには行きたくない、フランクも嫌いだと訴えます。
1952年と1982年を行ったり来たりしながらストーリーは進みます。
団地に義父が福岡からやってきます。
義父(三浦友和さん)はしばらく団地に滞在しています。息子は迷惑がっていますが、優しい悦子は義父によりそいます。
義父は元小学校校長先生で、悦子も以前は英語教師をしていました。
義父はかつての教え子に軍国主義教育を批判した論文を書かれてしまうのですが、わざわざその教え子の勤務先に出向き、自己肯定するような事を感情に任せて言ってしまうのです。
それを学校の近くで聞いている悦子です。悦子はただ無言です。
そして義父は福岡に帰っていきます。
時代が変わったのだと分かっていても、ついていけない姿が哀しいです。
やがて佐知子と万里子がアメリカに行く日が近づいてきます。
ある日の夕方、悦子は団地の窓から何気なく外を見ていました。
ここから少々ホラーになります。
黒い影が佐知子の家に行く途中にある橋を渡って行くのが見えます。
嫌な予感がしてすぐさま佐知子の家に向かうと、万里子がいなくなったと慌てている佐知子がいます。
二人は近辺を探すのですが……。
その様子に少し違和感を感じました。何故か二人が同一人物のように見えてくるのです。
もしかしたら二人は同一人物なのではないかと。万里子は佐知子の娘ではなく、悦子の自死した娘の景子ではないかと。
「あれ?」「あれれ?」と思っているうちに、観客は映像で衝撃的に知ることになります。
悦子は悲しみや後悔を癒やさないことで、自分を罰し続けて生きてきたのだと思います。
悩みや秘密を打ち明けることで心が軽くなることがあります。
悦子にはもう傷ついた心に手当をしてほしい。これから先の人生はどうかこの悲しみを癒やしてほしいと思います。
広瀬すずさんが大女優のように美しいです。
最後まで読んでくださりありがとうございます。
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