赤いチェック柄の表紙が可愛いです。2つの短編と1つの長編が収録されています。
『ブサとジェジェ』
芥川賞受賞の純文学を2冊読んだ後で、とっても読みやすいと感じたのもつかのま、知らないファッションブランドの英語に苦戦します。
ラフォーレ原宿は若い時に何度か行きましたが、お金が無くて、ただブラブラと見て回るだけでした。
主人公のジェジェはスクール水着を買うためラフォーレ原宿に来て、サクランボ柄のセパレートを買ってしまうという乙女でした。家は裕福そうです。
大人になってからのフリマアプリを通して知り合った年下のロリータ初心者「ぶさマルコ」との友情物語です。
最後は切なくなりますが、希望を持ちたいです。
『こんにちはアルルカン』
主人公は定年を迎えて契約社員になった60才のミカヅキ。「お婆さんになるのも悪くない」と、自分の顔を鏡で見ながら、高校時代の友人カヲルに語りかけます。
今は疎遠になっていますが、当時カヲルは作家志望で、ともに同人誌を制作していました。
作家志望のわりにコバルト文庫しか読まないカヲルが、ミカヅキに強引に勧めてきたのが氷室冴子先生の「さよならアルルカン」です。
私も「さよならアルルカン」を読みました。当時「小説ジュニア」という月刊誌があり、中学生の時に愛読していました。コバルト文庫ではなく、デビュー作をたまたま読んだのです。とても感動して、思春期まっさかりの私に大きな影響を与えてくれました。
近代作家の本しか読まないミカヅキですが、やっぱり衝撃を受けます。打ちのめされたと言います。
数十年後の現在、ロリータおばさんになったミカヅキは、雑誌の新人賞にある文章を見つけ憤慨します。最後の恨み辛みが痛快です。
「さよならアルルカン」を再び読んでみたいです。
『ピクニック部』
可愛いもの大好きな源治善悟郎(ぜんじげんごろう)と、義足の美少女の乃梨子先輩と目つきの悪いロリータ好きの里美先輩の、高校時代から大学生時代の青春ストーリーです。
3部構成になっており、1部は善悟郎、2部は乃梨子、3部は里美の語りで書かれています。
義足の美少女乃梨子に片思いした善悟郎は、乃梨子がワンダーフォーゲル部に所属していることを突き止め、同じく入部します。
乃梨子に片思いしていることを、乃梨子の友人里美に知られた善悟郎は、里美と「乃梨子をえこひいきする同盟」を結び、乃梨子のために部内にピクニック部を創設することになります。
3名の女子が加入し、ワンダーフォーゲル部内にピクニック部が発足します。山頂で食べるランチは料理が得意な善悟郎が担当し、女子が喜びそうなランチメニューを籐のバスケットに入れて現れ、他の女子生徒に大喜びされます。
結局片思いが実ることはありませんでしたが、それはそれでも良かったみたいです。
2部では乃梨子の告白が中心。意外と毒舌です。なぜ義足になってもワンダーフォーゲル部を辞めなかった理由が明かされます。それから乃梨子の好きな男性のタイプもついでに分かります。
3部では里美の目線から。東京の大学に進学した善悟郎との再会と別れとまた再会と別れが語られています。里美から告白し交際がスタートしますが、たった半年で別れを告げてしまいます。
なんで別れるのか里美は長々と語りますが、今ひとつ分かりません。
里美や乃梨子はたまに哲学的なことを言います。
「方向を間違えても一生懸命頑張る魂の方が、よっぽど清潔。」と乃梨子は言います。
里美は「自分が自分に対して与える礼節がブレなければ、矛盾したものに出会った時に自分を穢す必要はなくなる」、「礼節は自分を守る鎧になる」と言います。
最後になって、ようやく里美が善悟郎へ別れを告げた理由が分かります。それは善悟郎の律儀な「礼節」が原因でした。
善悟郎は、自分の好きなものに一直線で迷いがありません。シスターボーイとかオカマとか陰口をたたかれながらも、自分を全うしていきます。おまけにハイスペックです。
対して里美は、最初の方ではボーイッシュな外見と目つきの悪さで強気な性格と思われましたが、意外と迷ったり悩んだりして、か弱いです。数ページ延々と未練がましく善悟郎の悪口が続きます。
どうしてそれが別れの理由になるのか、私には理解できません。
それにしても久々の青春物語にこうも心が動かされるとは思っていませんでした。この手のものは羨ましいから避けていたのです。羨ましいというのは、私の青春時代は暗黒だったからです。失恋しても思いの丈を伝えあう青春は羨ましいの一言です。

著者:嶽本野ばら
発行:株式会社小学館
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