ミニシアターで不思議なドキュメンタリー映画を観ました。
台湾には日本人の神様、しかも元日本軍の神様が50箇所以上いるというのです。
この年まで生きてきて、初めて知りました。ちょっと謎です。
敵だったはずの日本人がなぜ神様になって祀られているのでしょう?
文化人類学者の藤野陽平さんと、記録映像作家の遠藤協さんがコロナ禍をはさみ6年に渡って訪ね歩き、映画を製作しました。
日本は日清戦争によって台湾を植民地支配していました。
幽霊の寿命は約400年くらいと、以前何かで読んだことがあります。
日本軍が身をひそめていたトーチカや洞窟には、今も殺された元軍人たちの魂が留まり続け、成仏出来ずにいると、台湾人のシャーマンは言います。
台湾の民間信仰では、人は通常ではない死に方をすると「鬼(クイ)」になるそうです。日本での「亡霊」のような存在です。
鬼はまだ自分の力で衣食住を得られないので、人から供養され供物をもらわなくてはなりません。そのため祟りとかで存在感を示します。祟りを恐れて人々は捧げ物をし祀ります。手厚く祀られることによって、祟りより霊験を現わしていき、ご利益に恵まれる人々が現れてきます。
ただし日本人神は陰神なので、目先の願い事しか叶える事が出来ません。例えば「宝くじが当たりますように」とか小さなお願い事です。(正神はギャンブルの手助けはしないとのこと)
もし願い事が叶ったら必ずお礼(お辞儀ではない)をしなくてはならなく、もしお礼(お金とかがいいみたい)をしなかったら恐ろしい事が起きるそうです。
だからもし観光で台湾にきて、街角の小さな廟や祠に気安く手を合わせてはだめです。正廟か陰廟か旅行者には分からないので、うっかり陰神に祈ってしまったら後から面倒なことになりますから。
やがて師匠の元で修行を重ね、正神になったエピソードも実際にあります。元海軍の杉浦茂峰さんのストーリーです。
この話しは伝統的人形劇「布袋戯(ポテヒ)」にもなりました。
パイロットだった杉浦さんが操縦する零戦は台南で米軍の攻撃に遭います。その地に墜落すれば村人や建物に被害が及ぶかもしれないと、人気の少ない方へ舵を切り墜落死しました。パラシュートで脱出すれば助かったのに、村人を救うために自分の命を犠牲にしたと地元の人々は信じ、飛虎将軍として祀ったということです。
正神とはいえ、亡くなってまだ100年くらいなので神様の中でも赤ちゃん状態で、まだまだ修行を続け、格を上げていかなくてはならないそうです。
関係ないけど、布袋戯を描いた1993年の台湾映画、侯孝賢監督の「戯夢人生」は私の超おすすめ映画です。日本統治時代は台湾の方々の気持ちとはうらはらに、日本軍賛美の布袋戯を演じてしたたかに生きのびてきました。
そしてもう1つ、田中将軍の話しです。
台湾人の石さんは、若い時に洞窟に入り、巫病(シャーマンになる過程で経験する心身の異常状態のこと)にかかり、田中将軍と通じるようになったそうです。衆生を救うため様々なことを教えてもらい、石さんは「東龍宮」という廟を建てます。そして実在を確かめるため故郷の鹿児島まで訪ね、子孫と交流も始めます。
信徒は東龍宮がある「枋寮」という場所と近郊の人々です。
田中将軍は、この地が好きなので、今でも信徒を見守っていると答えています。
映画のパンフレットを購入したら、田中将軍からの応援コメントがありました。
2026年5月に台湾の石さんを通して、田中将軍に映画の完成と上映の成功を伝えたそうです。普段は台湾語で会話するそうですが、この時は質問も回答も日本語で、「私はとっても気持ちいいですね。」とお話しされ、アメリカやトルコでも上映を勧める会話をしています。生前に和歌山沖で発生した「エルトゥールル号事件(1890年)」で遭難したトルコ人を母国まで送り届けた功績があるそうです。そのためトルコでの上映を勧めたのです。
田中将軍や飛虎将軍以外にも北川将軍とか、何人かの日本人神が登場します。軍人だけではなく、医師や警察官、女性もいます。
みんな福々しいお顔で、軍人は帽子をかぶり軍服を着ています。女性は日本髪を結っています。
日本人以外にも外国人の神様はたくさんいて、ピストルを持ったオランダ人や、清仏戦争で亡くなったフランス人の神様もいるそうです。
やっぱり多いのは日本人のようです。それだけ過去に色々やらかしていますから。日本人は台湾の親日感情に感謝です。
日本も神様がたくさんいますが、台湾は出自に関係なく、信仰で育てていくところがとても面白いと思いました。
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