元トップ女優が若返りたい美しくなりたいと切望して、怪しい再生医療で手に入れたもう一人の自分が暴走を始め、どんどん最悪になってしまうというお話しです。
主人公エリザベスは50才を超え容姿の衰えを感じています。
でも私から見ると年相応に美しく、スタイルも普通の人よりずっと若いと思います。テレビでフィットネスの番組を持っているくらいだから、そこらの50才と比べると全然イケています。
テレビの仕事を失った彼女は怪しい再生医療「サブスタンス」に手を出してしまいます。接種するとエリザベスの背中を裂き、中から若くて美しい女が出てきます。彼女はスーと名乗り、エリザベスの後釜として番組を得ると、すぐに人気に火が付き、またたく間にスターとなっていきます。
その命を保持するためには、エリザベスとスーが一週間毎の入れ替わりが必要になります。ルールは絶対です。でも浮かれているスーはそのタイムシェアのルールが守れずに、徐々に身体が崩壊にむかうのです。若さは傲慢です。この手の話し、上手くいった試しがありません。
ずっと気持ち悪いです。まず音が。
テレビの偉い人と食事するときの、パーティの、その咀嚼音が本当に気持ち悪いです。クチャクチャネチャネチャと不快な音が劇場いっぱいに広がります。
身体が生まれ変わるときも、プールの中から聞くようなモワーンとした感じです。
再生医療は自分で注射するのですが、その行為の音もウッとなる気持ち悪さです。
太い注射針の穴が見えるのですが、あれはとっても痛いはずです。若い時、手首に何度もガングリオンが出来て、整形外科でそれを太い注射針で抜くのですが、涙が出るほど痛いのです。
何度も何度も同じ箇所に針を刺すので、エリザベスの皮膚はどんどん黒ずみ、化膿した所から黄色い膿が出ます。
エリザベスへ密かに思いを寄せていた学生時代の級友の男性と再会します。エリザベスはあまり記憶がないみたいですが、とりあえず連絡先をもらいます。
孤独にさいなまれてどうしようもない時、その男性へ電話し食事の約束をします。
ドレスアップして、普段より念入りにお化粧して出かけようとしますが、出かけに一瞬鏡を見たら気になりだし、どんどん厚塗りになっていきます。
約束の時間が近づきますが、満足いく顔になりません。約束の時間は過ぎて男性から何度かメールがきますが、エリザベスはヒステリックに顔をぐちゃぐちゃにして、とうとう出かけることが出来ませんでした。誠実そうな彼なのに、自然な姿を受け入れてくれそうな彼だったのに、惜しいことをしました。さらに孤独感を深めていきます。
帰りのトイレで「気持ちわかる~、結局行けなくなるやつ~。」と言っていた人がいました。私も老いを感じた時、どんどんお化粧を足してしまった経験があります。でもある時あきらめがついて、今はすっぴんで過ごしています。あきらめると楽になることもあります。
大晦日のテレビで、スーが主役の特番が生放送されることになります。
だけど細胞分裂を繰り返し、スーかエリザベス(もうどっちが主か分からない)は、おぞましい姿に変化していきます。その姿は、楳図かずおさんか伊藤潤二さんの漫画のようです。そんな姿になってもテレビに出ようとする、スーかエリザベスのどちらか。
消防放水のように血が噴き出してテレビ収録の場を血みどろにします。エリザベスをクビにしてスーを採用したテレビ局の偉い人も、カメラからスタッフからダンサーから観客にいたるまで、全員血まみれです。気持ち悪さがこれでもかと押し寄せます。
みんな若さを求めすぎです。あれはひとときなのですから。
みんな平行移動で年を取って死ぬのですから、容姿の劣化は諦めましょう。
自然に逆らっても不自然になるだけです。
エリザベスも容姿の変化を受け入れて、お母さん役やお婆さん役を演じて演技派俳優として評価を得れば良かったのでは。
またはオードリーヘップバーンやアンジェリーナ・ジョリーのように慈善活動をしたりして、社会的評価を受けて余生をおくれば良かったのではないでしょうか。
エリザベス=デミ・ムーア
スー=マーガレット・クアリー
監督・脚本=コラリー・ファルジャ
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