舞台『シッダールタ』美しくて壮大な舞台でした。シッダールタの流浪の人生。高級娼婦カマラーとの一夜は官能的でした。

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草彅剛さん主演の舞台「シッダールタ」を観てきました。

何も無い場所に男(草彅剛さん)がいます。少しもうろうとしているようです。女が入ってきて「薬を飲んだのか」と聞きます。ここは病院なのでしょうか。

もう一人男がきて、「川に行こう」と執拗に誘います。デーミアンという名の男は時代を超えて何度も登場しては、シッダールタとだけ会話をします。

男は女からカメラを手渡されるとカシャカシャと撮り始めます。何も無い舞台に様々な現代の景色(本当に様々なカオスのように)が写し出されます。

言葉が抽象的で、これは難解な舞台かもしれない、もしこのまま最後までこの様子だったらどうしようと戸惑っていると、なめらかに古代インドの沙羅双樹の森に移行しました。

俳優たちが木々を移動させると、森の中を人が歩いているようにみえます。俳優たちがパントマイムで鹿や鳥を演じています。本当の動物のようで、さすがです。

若いバラモンのシッダ-ルタは、満たされた身分と頭のよさを持っていながら、物質的な物だけでは自分の幸福は得られない、渇きを癒やすことが出来ない、と両親の反対を押し切り、家を出て修行者の道を選びます。

サマナに加わり苦しい修行を行いますが、28日間の断食が終わると「こんなことは無駄だ」と気づき、サマナから去ってしまいます。切り替えが早く迷いがありません。賢いから判断がつくのでしょう。

ブッダの一行と出会いますが、行動をともにしていた友人のゴーヴィンダ(杉野遥亮さん)が帰依したものの、シッダールタは帰依しないで別の道を行くことにします。

私はシッダールタはブッダになるのだと思っていましたが、ブッダが登場したことで、別人だとわかりました。では、シッダールタは何者になるのでしょうか。

町に行くとそこで美しい娼婦のカマラー(瀧内公美さん)に出会い心を奪われます。相手は高級娼婦なので、大金を積まなくては相手にしてもらえません。何度か小銭をもっては訪ねますが、いつも寸止めで決定的な関係になれません。

シッダールタは商人になり成功し、博打に勝ち続け、あっという間に豪商になります。ここでも頭のよさが発揮されます。

大金を持ってカマラーの住む娼館を訪ねます。

二人が初めて結ばれる場面は、なんとも官能的でした。唇を重ね、二人の身体に互いの手が滑り、何度も身体が入れ替わります。流れるような仕草で行為が続き、名前を呼び果てます。

でも、心は孤独のままで満たされません。シッダールタは誰も愛せないことに気がつきます。

シッダールタは商人になって手に入れた屋敷や使用人や全てを捨て、町を出て行きます。

なんとも切ない話しです。高貴な身分に生まれたのに幸福感を得られず、修行しても無理、お金持ちになっても富に執着が無く、愛する女性と結ばれても心は孤独のままなのですから。

シッダールタが流れの速い川にたどり着きます。川で命を捨てようとしますが助かり、下流で渡し守になります。

カマラーは密かにシッダールタとの子どもを産んでいました。偶然にも川で再会し、赤子を抱かせると死んでしまいます。

17才になった息子もシッダールタに反抗してこの地を去ってしまいます。

やがて川からいろいろな声が聞こえるようになります。世界中の子どもの声や戦争の声や様々な声が聞こえます。渡し守をしながらその声を聞き続けています。

ブッダの死後も修行を続けているゴーヴィンダはシッダールタと再会し、私は何も見いだしていない、もし知っていたら教えてほしいと、穏やかな顔をしているシッダールタに懇願します。

その問いに対して、この世に絶対な真理などない、争いのどちらにも正義がある、善と悪を分かつことは出来ないと、静かに微笑みます。

なんて壮大で難しいテーマなのでしょう。分かるような、なんとなく分からないような。

生きていくって大変です。

原作はヘルマン・ヘッセ、演出は白井晃さんです。

美しい舞台でした。

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#舞台 #シッダールタ #草彅剛 #ヘルマン・ヘッセ #白井晃